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書く事、思う事、読む事

小説や、小説・文章についての考えを書くブログです。読んだ小説の感想も書きます。
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森鴎外作「山椒大夫」
 「山椒大夫」を読んだ。二万字程度の短編で、一冊の四分の一くらいの量だ。ネタばれになりそうなので、あらすじは避ける。
 やはり鴎外は上手い。文章と構成に無駄がないし、緻密だ。鴎外の文体は短編に適していると思う。長編を書くより短く凝縮するという気質を鴎外は持っている。
 最後は感動した。一連の描写が見事で、特に最後の行への接続が素晴らしい。文章の上達法に書写があるが、それにふさわしい小説だ。
 この小説は歴史小説の要素が薄い。それほど資料は要らなかっただろう。森鴎外はこういう小説を書く時、運命に特別な愛着がある。主人公は数奇な運命を受け入れ、身を任せる。どんな運命であっても、それを受け入れる事で主人公は幸せになる。この小説では特に、運命に信頼して導かれるままに行動している。
 運命とか因果応報とかを信じている人は案外多いのではなかろうか。経験から、僕は信じている。つらいことがあれば楽なことがあるし、人に善くすれば自分にも返って来る。苦しいこと、つらいことに目は向いてしまいがちだが、よくよく自分を顧みると善いこと、楽しいことも同じ位ある。
 興味が湧いた人は青空文庫に行けばただで読める。著作権が切れているからだ。
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文章読本
 文章読本を知っているだろうか。小説家の谷崎潤一郎が『文章読本』という、読者向けに文章の書き方、読み方を解説する本を書いた。それが始まりで、幾人もの作家が文章について同タイトルで書いている。
 どの本にも文章上達のコツ、名文の秘密など作者の文章書きとしての技能が詰まっている。
 その中で愛読しているのが、谷崎潤一郎の元祖『文章読本』だ。谷崎は名文家として知られていて、この文章読本にも技巧が凝らしてある。とても読みやすい。
 文章そのものについての講義に始まり、文章の上達法、それを受けて文章の要素について解説がある。学ぶべき事が多い。また本人が名文の定義としてあげている「読めば読むほど滋味が出る」の通り、繰り返し読んで楽しめる。これを読むと読書観が変わる。読者にもオススメだ。
 谷崎潤一郎には大きく影響を受けていて、このブログも『文章読本』の精神に沿って書いている。
 
バレンタインデー
 遅いですが、バレンタインネタで掌編を書きました。といってもプロットが中途半端で、あまりバレンタインデーはメインじゃありません。自分でもいまいちだと感じます。練習あるのみ。



 オレの通う学校は、学用品以外は持って行けない事になっている。見つかると没収の上、説教を聞かされる。佐々木が携帯を見つかって、こっぴどくやられていた。高校生になって一月も経ってない頃だ。
 高校では初めてのバレンタインデーの朝、女子はチョコレートを持って来たようで、抜き打ちの検査がないかと不安げにささやきあっている。佐々木が席まで来て、言った。
「なあ、抜き打ち検査、あると思うか」
「あるかも知れないな」
「先生のお気に入りじゃないか、何か知らないの」
「何も」
「なら、探りを入れてこいよ」
 無性に知りたがるので、少し気になった。先方でも表情で察したらしく、こう言った。
「だってさ、もしチョコレートをもらった後で検査があると、いろいろ面倒なことになるだろう。規則にうるさい河野先生のことだから、チョコを取り上げて色々と聞くかもしれないぜ。『誰からもらったんだ』、とかな」
 佐々木が先生の声をあまり上手く真似るので笑った。有無を言わせない調子が似ている。
「そしたら、勇気を振り絞ってひっそり告白した彼女の心はズタズタさ」
「ロマンチストなんだな」
 オレはこう言って笑った。佐々木が携帯の件で、河野先生を好く思ってないことは知れていたから、それでそんなことを言ったのだろうと思った。
「笑うなよ、冗談じゃないかもしれんぜ」
 佐々木は少し失望したような、怒ったような顔になった。
 午前中は何事もなく過ぎた。昼休みにまた佐々木が来た。寮の食堂で食べていた所へ、わざわざ出向いて向かいの席で弁当を広げた。黙って食べていると佐々木が声をかける。
「検査のこと、ホントに何も知らないのか」
「知るわけないよ」
 こうまでしつこいのはわけがあると思って訊いた。
「チョコ、貰ったんだろう」
「まさか。そんなわけないだろ」
 あわてて否定するのでおかしかった。佐々木はサッカー部で体はがっしりしているのに、気持ちはぐらつきやすい事は最近になって分かった。
「いいよ、いいよ。大丈夫だって、やるならとっくにしてるさ。それに河野先生はそんな野暮じゃないよ」
「どうだか。河野は御贔屓の先生だからな、どこがいいんだか」
「尊敬してるんだよ、いい先生だぜ」
「むやみに厳しいだけじゃないか。しかし、午後が無事にすむといいな」
「心配なら女子に隠し場所を聞いたらどうだ」
「女子に聞くのはちょっとな」
「男子と女子って、あまり交流ないよな」
 後は話題がそれた。
 授業が全て終わり、終礼のために河野先生が来た。頑丈な体つきで、もう五十近いが動作はきびきびしている。オレの机の前を通って、佐々木の席に差し掛かった時、佐々木が鞄を取り落とした。教科書に紛れて、綺麗に包装された小箱が出た。
 オレと佐々木とははっとして先生を伺う。つと足をとめて、「鞄が落ちたぞ」とおっしゃった。黙許だった。佐々木は素早く小箱をなおして、不思議そうに先生を見た。
 オレは先生のこういう所が好きなのだ。
直感は経験から
 文章は直感で書くものだ。頭に浮かんだ事を文にする時、どの言葉を使うかは直感で決まる。ふと浮かんできた言葉を使うのだ。
 さて直感を磨くにはどうすればよいか。二月二十五日の読売新聞に興味深い事が書いてある。プロ棋士の直感は、膨大な知識、経験への無意識的なアクセスであるらしい。そしてこの直感には一秒で百万局以上を読み尽くす将棋ソフトでも太刀打ちできない。
 直感がいかに効率的に、膨大な知識、経験から情報を引き出しているか、お分かりだろうか。コンピュータにはまだこのような働きはできない。
 こんなにも優れた脳を皆等しく持っている。足りないのは経験と知識だ。逆を言えば、経験と知識さえあれば名文を書ける素質が、誰にでも備わっている。
 良い文章を書く直感を養うには、よく本を読んで経験を増やすしかない。
文章の含蓄
 文章の極意で文章には限界があると書いたが、何とかありのままを伝えようと、言葉を浪費する文章が多い。どんなに言葉を重ねてもありのままを伝える事はできず、逆にわかり難くなる。文章の限界をよく知っていないと、そういう駄文になりがちだ。
 重要なのは含蓄だ。上手に書くコツは文章に含みを持たせる事だ。無駄な言葉を省き、文章を練っていく。仰々しく言葉を飾り立てず、質素にする。そうして文章を削る事が含みを持たせる事になる。
 言葉を惜しんで使う事は簡単なようでいて、難しい。気をつける点は、意味の重複している所、無駄な形容詞と副詞、無理に意味を明確にしようとしている所、意味のつながりがしつこい所(接続詞など)だ。実際には、気を付けていても見逃してしまう。

 紅髪の小部屋に含蓄の実践が書いてある。いい文章を書く極意という記事だ。手間はかかるが実用的だと思う。文章を削ることが含蓄につながる。
文章の極意
 文章で伝えられる事には限界がある。例えば風景にしても、映像のように完全に内容を伝えることは出来ない。其処に読者の想像の余地があるというわけだ。
 なので、何から何まで詳しく書かないで、読者の想像にまかせてやる文章を書いた方がいい。文章で表せる事の限界を知り、その限界の内にとどまる事が文章の極意なのだ。
 何を書き、何を書かないかが難しい。上手い文章家は本当に必要なことだけを書く。ことばを惜しむように書く。決して必要以上にことばを割いたりはしない。何を書き、何を書かないかを見分ける勘が名文家には備わっているのだ。

 何を書き、何を書かないか。文章の限界。それを知るには勘に頼るしかないと思う。読書をする内、段々上手くなるのはその勘が磨かれて来るからだろう。上手い文章を書くには、文章への感覚を磨くしかない。
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  • 小説の書き方講座
    その名のとおり小説の書き方がわかるサイトです。初心者から上級者まで、見るべき情報が多いです。テーマを取り上げて講義していく形式で、小説を書く上での細かい点やコツを知りたい人にはオススメです。
小説その他リンク集

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